担任とは、30人規模の組織のリーダーです。
リーダーが不安定だと、その組織がぐらついてしまうように、学級についても同じことが言えます。
学級経営のハウツー本から学ぶことも大切ですが、リーダーとしての考え方や組織論というより広い視点から学ぶことは、今以上にあなたの学級経営の腕を上げてくれること間違いなしです。
新たな視点やより深い考えを育むためにも、この記事から今求められるリーダーシップや組織論の大枠を学んでみましょう!
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学習する組織の作り方|ピーター・センゲ『学習する組織』
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リーダーの正当性について
政治学者マックス・ウェーバーはリーダーの正当性を3つに分類しています。
- 法律など正当な手続きを経ることによる正当性
- 伝統や身分による正当性
- 圧倒的な支持を受けることによる正当性
担任である私たちは、2の先生としての身分(立場)による正当性からリーダーだと見なされていると考えられます。
ですが、中には3の圧倒的な支持を得ていることが要因になっている先生もおられるはずです。
そのような先生方は、やはり組織として学級を動かすことに長けており、リーダーシップを発揮することで子どもからの信頼を獲得しているのでしょう。
一人ひとりへの対応も大切ですが、組織としての対応というのも同様に大事になるわけです。
リーダーが知っておくべき世俗的サイクル
進化生物学者ピーター・ターチンは歴史には世俗的サイクル(長期サイクル)があることを見出しました。
人口が増える
→限られた資源の価値up
→労働の価値が資源の価値に対してdown
→土地などを所有する富裕層と労働者の格差が増す
→富裕層の限られた社会的ポストの激化
→競争規模が大きくなる
→国家が富裕層を聖所できなくなる
→格差による不満が高まる
→暴動が起こる
→富裕層の富を破壊し、格差が縮まる
→人口が増える
国家のリーダーは、この世俗的サイクルを認識し、暴動や戦争を避けながら国民の格差を是正する業が求められてきました。
これを一般的な組織に当てはめた場合
リーダーは「限られた資源(富)」と「限られたポスト(地位・役職)」を平和的に増やして分配することが必要になります。
学級にこのサイクルを当てはめてみましょう。
同様なサイクルが起こるわけではありませんが、不安定な学級にはこのようなサイクルが現れるはずです。
学級内のやんちゃな児童による教師へのチャレンジ(権威への反抗)
→児童を制御できなくなる
→グレを基準とした子ども間の地位の格差が生まれる
→グレを基準とした優位者と劣位者の格差に不満が生まれる(差別など)
→劣位者による暴動も悪化する
→教師へのチャレンジor優位者への集団でのチャレンジ
不安定になる要因が一概にこのサイクルであるとは言えませんが、教師へのチャレンジ(権威への反抗)が成功し、立場が逆転してしまうことで学級が崩壊してしまうことは多々あります。
このような状況にならないために、学級では公平に活躍できる場(ポスト)を分配することを意識しましょう。
リーダーとして知っておくべきこと
次に、リーダーとして知っておくべき内容を紹介します。
知っているのと、そうでないのとでは、組織に対して打てる手立ても変わってきます。
「知は力なり」
という言葉もあるように知識はリーダーの武器になります!
自己組織化について
あるランダムな状態にある構成要素が、構成要素間に働く相互作用によって、自発的に特定の秩序構造を形成する現象のことを自己組織化と言います。
これは人にも当てはまることで、一人ひとりはバラバラの価値観や考え方を持って普段は行動していますが、集団の中にいると、周りと同じような行動をしてしまうものです。
自己組織化によって形成された集団が多数派の意見や雰囲気に流されて動くとき、時として組織は破綻に向かうことがあります。
リーダーは常にアンテナを張り、組織が破綻に向かうことを回避しなければなりません。
関連
集団に依存する生物にとって最も恐ろしいのが「仲間はずれ」です。
特に意思決定のための知識と経験が不足している子どもにとって、「仲間はずれ」は死を意味します。
そのため、思春期を迎えるくらいの年頃になるとグループでつるみ、なんとか仲間から阻害されないようにしたり、また他の子を除け者にしたりすることで、本能レベルでなんとか自分の命を守ろうとしているのです。
逆に「仲間はずれ」を恐れず、自分ひとりで意思決定できる個体はリーダーとなる可能性が高くなります。
リーダーを持たない組織による意思決定(集団の空気感や多数派の意見)には、何かと問題が起こりやすいものです。
リーダーが不在の場合、集団は単なる群れと化します。
群れであることで、それぞれの個体の当事者意識は下がり、パフォーマンスを低下させてしまいます。
これは、リンゲルマン効果や傍観者理論として名付けられています。
個体の多くは、積極的に群の規則に従う習性があり、個々のパフォーマンスが低下した状態の意思決定に追従するので、集団全体としてもパフォーマンスが低下してしまうわけですね。
リーダーは、組織全体の行先を常に軌道修正していかなければならないと考えておくべきです。

その子たちがやる気無いというよりも、集団における規則がそうさせてしまっているという側面があるということも理解しておかなければいけない。
その上で、どのような手立てを打てばいいかはリーダーとしての腕の見せ所だ。
順位制について
生物の多くは組織内に序列を生み出し、他の個体よりも有利になる地位を求める傾向があります。
人が社会的な地位を求めるのも本能であり、この現象は自己組織化による規則に他なりません。
組織内に序列が生まれることを順位制といい、この状態を自然に任せ、放任してしまうと、組織に排他性と差別が生まれてしまいます。
リーダーとしては、この排他性と差別を必ず取り除く必要があります。
そのためには、順位制における劣位者であっても豊かに暮らせる社会的余裕が必要になります。
参考
順位制が浸透している組織は、独裁的なリーダーが出現すると安定することがわかっています。
昔ながらの部活動のイメージです。
順位制をもった組織では、内部の争いを回避するために親しみのコミュニケーションが増えると言われています。
構成員同士が仲良くなり、団結が生まれる一方で、組織内の順位はより強化されてしまいます。

勉強、運動の2つの面によって学級内での序列は決まりがちだ。
序列が生まれるのは生物の特性として仕方のないことなのだが、その序列の中での優位者と劣位者を把握し、常に劣位者に該当する子へのケアをリーダーとしてしなければならない。
そして、差別や排他を絶対に許さないという姿勢は必要だ。
利他性について
利他性とは
他人のために他人を思いやる気持ちまたは欲求のこと
です。
他人のために動ける人というと素敵に感じますが、組織として考えると実は少し恐ろしい側面もあります。
なぜなら、そのような人で構成された組織は戦い(縄張り争いや戦争)からです。
戦いでなくても、利他性で溢れる組織は様々なこと争いごと(スポーツの大会やコンペなど)でとても大きなパワーを発揮します。
組織を動かしていくなら、まず一人ひとりの利他性を醸成することに力を注ぐべきだと昔から多くのリーダーは考えていました。
組織で利他性を発揮するために大切なのが、構成員同士の仲の良さです。
仲の良い関係では、利他性が発揮されやすいことは、皆さんも実体験として理解できるのではないでしょうか。
参考
仲が良いという状態は、恩を返してもらえる(困ったときは助けてくれる)確率が高いので、お互い積極的に助け合うことができるようになります。
組織内の親密性や互恵性を高める方法として有効なのが
自己開示
です。
自分が打ち明けなければ、決して相手が知ることができない事柄を互いが伝達し合うことで、お互いを知っている状態を組織に生み出すことができます。
なぜ、お互いを知っている状態が仲の良さに繋がるのかは、次の項目で述べていきます。

自己開示は、組織の仲を深めるとても大切な行為であることは頭に入れておくべきだ。
第一次集団と第二次集団
第一次集団とは家族のことです。
第一次集団には、順位制がほとんどありません。(遺伝子が共有されているため)
か弱い自分をさらけ出すことができ、無条件で自分の存在価値が認められます。(失敗もかなりの程度許される環境)
第一次集団は、「安全地帯」や「帰る場所」となるのです。
ポイント
自己開示をすることは、か弱い自分をさらけ出すことに他なりません。
互いにか弱さも含め、あらゆる事柄を打ち明けることで、存在価値を認め合えるため、その関係に安心感を覚えるようになります。
それが仲の良さにつながるわけです。
そのような状態が広がっている組織は第一次集団に近づいていき、構成員は組織を「安全地帯」「帰る場所」と認識するようになります。
第二次集団とは、人為的に作られた組織のことです。
人為的に作られた組織では、互いが生存と繁殖をめぐるライバルの関係であるため強烈な順位制が現れます。
利己的な遺伝子は、他の個体よりも有利な立場を常に望んでいるため、第二次集団では本当の意味で互いを思いやることはありません。

その一つとして自己開示ができるような場を設けることが手立てとして打てるわけだ。
他にも、恐れず失敗ができる雰囲気や、順位制をできる限り取り除く(順位制を感じさせない)ことも手立てに上げられる。
リーダーに望まれること
ここからは、リーダーが組織のメンバーから何を望まれているのかを紹介します。
皆さんもぜひ、どのようなことをリーダーに望むか考えながら読んでみてください!
第一次集団的な組織作り
先ほども書きましたが、組織を運営する上でリーダーとしては第一次集団の形成に努めなければいけません。
ただ第二次集団が本当の意味で第一次集団になることはないので、近づけていくという意味合いになります。
客観的には第二次集団でも、主観的には家族のように感じさせてくれるリーダーが求められており、そのためには順位制の悪い影響を少しでも減らすように努める必要があります。
そして、互いのことを家族や親友のように感じられる状態を目指していくのです。
返報性に従う姿勢
返報性とは
他人から何かしらの施しを受けた場合に、お返しをしなければならない
というような感情を抱く習性のことです。
リーダーには、他の誰よりもこの返報性に従うことが期待されています。
恩に感謝することはもちろん、罪を償うことも含めて素早くお返しをするようにしなければいけません。
リーダーに支援すれば十分な見返りがあると思われると、他者から多くの力を引き出すことができます。
ただここで注意しなければいけないのが、組織にもたらした利益に対して正しく報いるということです。
頑張ったからというような労力に報いるのは、組織としてもマイナスに働いてしまいます。(しんどい思いの報告合戦になりかねないため)
正しい努力、正しい利益に対して評価するように心がけましょう。
三次元的権力の行使
リーダーには権力がつくものです。
しかし、この権力を間違えた方向に使うと、組織のメンバーは疲弊し、リーダーに対して嫌気をさしてしまいます。
権力には3つの種類があると言われます。
それが一次元的権力・二次元的権力・三次元的権力です。
そして、この中で今の時代のリーダーに求められるのは三次元的権力になります。
参考
一次元的権力とは、権力者の命令によって、何かを強制的にさせる力のことです。
権力者にとっては自己効力感を伴うため、とても気持ちの良いものになります。(担任の中でも高圧的に子どもたちを動かす人がいますよね。その人は一元的権力の快楽を享受してしまっている可能性があります。)
この強制は組織のメンバーに劣位性を感じさせるため、リーダーに対して不快感を抱いてしまいます。
二次元的権力とは、権力者にとって都合の悪い事実を組織のメンバーに悟られる前に握り潰す権力のことです。
後々、情報が漏洩してしまった場合は組織として破綻へと向かう可能性があります。
三次元的権力とは、権力者が他者の思考や欲望に影響を与えることで、他者が権力者にとって都合の良い行動をとるように促す力のことです。
リーダーが他者のモチベーションを高めるときなど、この力が発揮されます。
リーダーとして、みんなの利益になる優れたビジョンを示し、人々をそのビジョンに向かわせることを意識しましょう。
知性
リーダーは、基本的に多くのことを知っている必要があります。
そして組織のメンバーよりも現在と未来に関する洞察が優れているべきです。
そのため、マジョリティが信じる考えてあったとしても、それが間違っていると思えば、否定してみせななければいけません。

様々な本を読んだり、多くの体験をしたりして少しずつ身につけよう!
まとめ
以上、学級経営にも役立つリーダーシップや組織について紹介してきました。
始めにも書きましたが、学級経営のハウツー本で勉強することも学級経営の腕を上げることに繋がります。
しかし、私たちは組織のリーダーとして、さらに広い視点を持つことも大切ではないでしょうか。
例えば、中学校の数学教師は、高校数学の範囲を熟知し、高校の数学教師は大学数学の範囲を網羅しています。
私たち教師も学級担任という立場からさらに広げ、組織を統括するリーダーという意識をもち、リーダー論や組織論を学ぶことで、より学級をよりよい集団へと導くことができるはずです。
「確かに!」と感じた方は、ぜひ参考にした書籍などから、この分野について学習してみてください!
参考書籍